あらすじ

あらすじ 夏の北海道。空が白み始める前の午前四時半、牧場で働く二十一歳の女性は、今日も牛舎へ向かう。息を吐くたびに白くなる冷たい空気の中、毎年恒例の研修生たちが、この夏も牧場にやって来た。 眠気と不安を抱えながら作業に臨む研修生たちは、失敗を重ね、注意を受け、それでも少しずつ牧場の朝に慣れていく。その中に、特別目立つわけではないが、黙々と仕事に向き合う物静かな少年がいた。三つ年上の彼女は、指導役として彼を支えながらも、一定の距離を保ち続ける。 早朝の厳しい労働のあとに訪れる短い休憩、牛乳の甘さ、朝日が牛舎に差し込む瞬間。そうした小さなご褒美の積み重ねの中で、研修生たちの表情は次第に変わり、牧場には笑い声が増えていく。 彼女は彼らの成長を見守りながら、自分がすでに「送り出す側」にいることを自覚する。若者たちはこの夏を踏み台に未来へ向かうが、彼女は明日も同じ時間に起き、同じ仕事を続ける。 やがて研修の終わりが訪れる朝。 白い息を吐きながら迎えた始まりの時間は、別れの時間へと変わる。 それでも彼女は、あの四時半の冷たい空気の中に確かにあった、青春の気配を忘れない。

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カクヨム2025/12/28
  • 現在の作品北海道酪農家住み込み研修記