あらすじ
ある男は「今日は完全な日だ」と感じ、強い酒を飲みながら自ら命を断つ決意をする。彼は静かに身を投げる。
一方、「私」は自室の窓辺に座り、毎日同じ時刻に落ちてくる男の姿を目撃し続けている。落下の瞬間だけが時間から切り取られたように繰り返され、死体はどこにもなく、ただその場面だけが再生されるのだ。
最初は恐怖し混乱した「私」だったが、次第にその出来事に慣れ、コーヒーや天気、気分の違いとともに“日常の一部”として落下を眺めるようになる。
やがて運命の時刻、「私」は外に出て上を見上げ、落ちてくる男と視線を交わす。その瞬間、それが幽霊ではなく生身の人間の落下であることを悟る。後に、その出来事はニュースとして報じられる。
落下を見続けていた「私」が目にしていたのは、繰り返される幻ではなく、現実の死の瞬間だった――というところで物語は幕を閉じる。