あらすじ
明治十五年、冬。
文明開化に浮かれる東京で、元藩士の老人が不可解な死を遂げる。
首筋に残された小さな傷。争った形跡のない、仏のような死顔。
警視庁巡査・藤田五郎は、かつて「斎藤一」として剣を振るった男だった。
法という鞘に牙を収めた彼は、事件の背後に残された“数式”に違和感を覚える。
それは算術ではなく、国家が隠し続けてきた
「消えた五万石」――文明を支える富の歪みを告発するものだった。
真実に辿り着いたとき、
藤田は再び問われる。
法か、剣か。
数字か、命か。
これは、
割り切れぬ「一」を背負い続ける男が、
明治という虚構の境界を歩く物語。