あらすじ

長年教壇に立ってきた50代の主人公は、秋晴れの朝、岡山で手に入れたばかりの黒いスポーツカーに乗り込み、瀬戸内海を渡って四国を目指します。目的地は明かされず、行く理由も「今は言えない」と彼はつぶやきます。瀬戸大橋を渡る際に目に映る島影や橋桁、潮風の匂いなど、旅の情景が丁寧に描かれ、読者は彼とともにドライブへ誘われます。 四国に渡った彼は国道を避け、坂出から五色台の裏道や高松市へと抜ける山道を走ります。途中、讃岐うどんの名店に立ち寄るものの、店内のテレビから流れるひき逃げ事件のニュースに動揺し、店主からの問いかけに冷や汗をかく場面が緊張感を高めます。さらに道中で遭遇する検問や警察官とのやり取りが彼の焦燥を煽り、読者にも不安を共有させます。 やがて彼は妻と一緒に訪れた寺や海岸を巡り、夫婦の思い出を反芻します。多度津の海岸寺で子宝を祈ったことや、父母ヶ浜の夕景、琴弾公園の銭形砂絵など、美しい景色と観光地を巡る描写は旅情に溢れ、香川の風土や文化を堪能できます。その一方で、彼の胸の内には消えない痛みと後悔があり、「教師として生徒に正しく生きることを説いてきた自分が罪を犯してしまった」と葛藤する独白が重くのしかかります。この旅は単なる観光ではなく、生涯連れ添った妻の願いを叶える最後のドライブであり、同時に自分が背負った“罪”と向き合うための逃避行なのです。 なぜ彼は車を乗り換え、警察の目を避けながら四国へ向かったのか。途中で出会う人々の言葉や風景が物語に彩りを添えつつ、彼の行動の動機は少しずつ明らかになっていきます。最後に彼は重大な決断を下しますが、そこに至るまでの心理描写が緊張感を途切れさせません。“最後のドライブ”は、壮麗な風景と切ない回想が織りなすミステリーとして、旅の魅力と人間の良心の狭間を巧みに描き出しています。

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エブリスタ
エブリスタ2025/12/27
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