あらすじ

高校生の中島亜未は、親友・川村すみれが町を流れる川で溺死したという訃報を受ける。事件は事故として処理され、警察は早々に捜査を打ち切った。しかし、いつも明るく前向きだったすみれが事故で死ぬとはどうしても思えず、亜未は強い違和感を抱く。 亜未は、すみれが進路を理由にバスケ部を辞めていたことや、生前どこか影を帯びていたことを思い出し、「すみれは何かの事件に巻き込まれ、殺されたのではないか」という他殺説を立てる。しかし調べを進めても、決定的な証拠は見つからない。そんな中、事故としては出来過ぎている点や捜査の早期打ち切りに疑念を持つ刑事・須藤と出会い、二人は非公式に真相を探ることになる。 調査の過程で、すみれが三年生の朝野先輩と交際していた事実が浮かび上がる。親友である亜未ですら知らなかった恋愛関係にショックを受け、朝野に直接話を聞くが、彼の態度はあまりにも整いすぎており、亜未は言い知れぬ違和感を覚える。やがて須藤から、すみれが朝野との間に子どもを身ごもり、極秘に堕胎手術を受けていた事実を知らされる。 担当医は、亜未が親友だと知り、警察にも話していない真実を明かす。すみれは退学しても構わないから子どもを産み、朝野と東京で暮らすことを望んでいた。しかし朝野はそれを拒み、東京で一緒に暮らす条件として堕胎を求めたのだった。その理不尽で残酷な選択の末、すみれはすべてを失ったが、それでもなお彼女の死には直接結びつかない。真相は迷宮入り寸前となる。 そんな中、亜未は生前すみれから渡されていた机の鍵を思い出す。線香をあげる名目ですみれの家を訪れ、こっそり机を開けると、そこには遺書が残されていた。遺書には、生まれるはずだった子どもの名前と、死を前にした静かな心境が綴られていた。それは、すみれが殺されたことを示す確かな物証だった。 亜未は須藤刑事とともに朝野を体育館に呼び出し、遺書を突きつけて問い詰める。朝野はすべてを自白する。本来は川で心中する予定だったが、すみれが死を強く望んだため、結果的に彼女だけが命を落としたのだと語る。事件の全容は明らかになるが、警察の判断は覆らず、捜査は正式に打ち切られる。朝野は県本部長の甥という立場から、処罰されることはなかった。 すみれの死は学校や亜未に大きな衝撃を与えるが、結末は不条理なまま、風が吹いたように終わる。亜未は朝野に「すみれのことが好きだったのか」と問いかけるが、返ってきたのは軽薄で無神経な言葉だった。その瞬間、亜未は悟る。自分はすみれを親友だと思っていたが、恋も、命も、絶望も何ひとつ知らなかったのだと。 それでも亜未にとって、すみれは確かに「親友」だった。 親友であり、そして最後まで理解しきれなかった――赤の他人だった。

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カクヨム2025/12/27
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