あらすじ
絹茅桜太(きぬかや おうた)は、自分を「黎(くろ)」だと認識して生きている。
すべてを俯瞰し、感情を排し、完璧な日常を演じるための自己定義。
だがその内側には、桜太自身が生み出したもう一つの人格が存在する。
殺すことでしか愛を実感できない、交代人格・繞(まと)。
繞にとって、育ての親である医師・上總洋二(かずさ ようじ)の殺害は
「歪んだ愛を完成させる」ための最終目的だった。
黎――すなわち桜太は、その狂気を理解し、制御し、隠蔽する。
それは獣を飼いならす行為であり、
同時に自分自身と日常を守るための、唯一の選択だった。
完璧に偽装された危うい日常。
しかしその「色」は、一人の少女・桐崎紗莉菜(きりさき さりな)に目撃されたことで濁り始める。
「繞さん。あなたの愛を、私が終わらせてあげる」
完璧なアリバイと、究極の殺害計画。
これは、人格を分離することでしか生きられなかった男が、
“愛を管理する者”から、“愛に呑まれる者”へと変わっていく物語だ。