あらすじ
隣の家のベランダから伸びてくる細い指が、僕の部屋の窓を叩く。
「悠真ー、朝だよ。生きてる?」
カーテンを開ければ、そこには朝日を浴びて栗色の髪を揺らす、佐倉陽葵の無邪気な笑顔があった。
(……生きてるどころか、君のせいで今、心臓が止まりそうなんだけど)
僕は鉄面皮を張り付けたまま「……うるさい。今行く」とだけ答え、視線を落とした。
僕たちは十七年間、常に隣にいた。親同士が親友で、幼い頃はおままごとをして遊んだ。「お母さん役」の陽葵に、僕はいつも「赤ちゃん役」としてよしよしされていた。その配役は、高校二年生になった今も、彼女の中では更新されていない。