あらすじ
ゼミ終わりの気だるい教室。西日が差し込む窓際で、世界で一番不快な周波数の声が鼓膜を震わせた。
「ねえタケシ、週末はパパの別荘で過ごさない? 携帯は圏外だから、デジタルデトックスしながら静かで二人っきりでビーチを満喫しようよ!」
「お、いいねミチル。邪魔が入らないのが最高だ」
甘ったるい声で囁くミチルと、にやけた面を晒すタケシ。
大学公認のリア充バカップル。俺のような陰気な工学部生を「オタクくん」と見下し、嘲笑ってきた連中だ。
俺はキーボードを叩く手を止めず、心の中でどす黒い好奇心を膨らませた。
――圏外。別荘。二人きり。
それは、あまりにも「都合の良い」舞台設定だった。
俺は帰宅するなり、悪戯半分でPCを立ち上げた。
奴らのSNSから画像を収集し、最新の生成AIに食わせる。ディープフェイク技術は、今や素人でもプロ並みの動画を作れるところまで来ている。
数時間後、そこには涙ながらに助けを乞うミチルの動画と、縛り上げられた写真が完成していた。
送り先は、ミチルの父親。表向きは不動産屋だが、実態は街金の社長だ。
「商売柄、脛に傷持つ身。警察には駆け込めないはずだ」
俺の読み通り、父親は警察を通さず、手下の若い衆を使って必死に娘を探し始めた。だが、別荘は圏外。連絡などつくはずもない。