あらすじ
身体は数値で管理され、異常は即座に切り分けられる社会で、ある日「測定不能」と記された部位が人々の身体に現れ始める。体温でも脈拍でもなく、画像にも映らないその領域は、痛みも機能不全も示さないまま、確かに“そこにある”。医療従事者である語り手は、記録不能な部位を抱えた患者と向き合ううちに、検査や規則が身体を守るためではなく、身体から逸脱を排除するために存在していることに気づいていく。やがて語り手自身の身体にも測定不能部位が生じ、名前・役割・正常値が次々と剥奪されるなかで、「測れないもの」を抱えたまま生きるとは何かが静かに問われていく。
数値化できない部分が最後に残すのは、欠損か、自由か——その境界が崩れるまでの記録。