あらすじ
前世で100年。転生後の今世で78年。一日の欠かさず刀を振り続け、178年という気の遠くなる歳月を「居合」だけに捧げた男、サイトウ。彼は、闇の貴族アルトシュタイン家の執事長でありながら、屋敷中の者たちから「ボケ老人」「穀潰し」と蔑まれていた。最新式の銃火器が戦場を支配するこの時代、古臭い剣術を磨き続けるサイトウは、ただの「給料泥棒」に過ぎない。サイトウ自身も、その罵倒を甘んじて受け入れていた。「今の自分は、何の役にも立っていない」。そう自覚しながら、それでもなお、ただの呪いのように素振りを繰り返す。そんな彼の唯一の救いは、彼を蔑称ではなく「サイトウ」と名で呼ぶ、わがままなツインテールの幼嬢・リズ。「あんた、私がいないと野垂れ死ぬんだから、ずっと私のそばにいなさいよね!」。サイトウは、その不器用な愛を錨に、このまま無能として平穏に朽ち果てたいと願っていた。――しかし、平穏は血の海へと沈む。深夜、屋敷を包囲した暗殺者たち。最新の銃を誇った使用人たちが次々と屠られ、最愛の主が危機に晒された時。穀潰しと呼ばれた老人の指先が、178年の眠りから覚めた「真剣」の柄に触れる。これは、時代に捨てられた一人の老執事が、主である少女を守るためだけに、世界そのものを斬り裂く物語。