あらすじ
「……最近、このあたりも野良犬が増えたな」
チャールズがぽつりと呟いた。空は黒ずんだ雲が低く垂れこめ 、風に運ばれた湿った土の匂いが鼻の奥に絡みつく。ジョンはちらりとチャールズに目をやり、小さく頷いた。
ベンは「うん」とも聞こえるような短い咳払いをした。ベンは耳が遠く、ほとんど聞き取れなかったのだ。しかもチャールズは独り言が多い。聞き返すと、不機嫌になることがこれまでたびたびあった。
二人は丘の上の古い木製のベンチに肩を並べて腰掛けていた。塗装の剥げた板はざらつき、埃っぽく、手で撫でると指先がうっすら汚れる。丘の斜面の向こうには灰色にくすんだ町並みが続き、屋根の列が時の移ろいを黙って受け入れていた。
「……最近、野良が増えた」
「ん? ああ……」
「イミンノエイキョウってやつらしいぞ。おれたちと違って、奴ら基本、放し飼いなんだと」
「そうなのか。けど、飼われていることには変わりないんだろう?」
「そいつらが抜け出して、野良になっているんだとよ」
「ああ……」