あらすじ
承認欲求を満たすため、SNSに「死んだふり」の自撮り写真を投稿し続ける私。
「#死化粧」のタグで繋がるその界隈で、私はそこそこの評価を得ていた。
しかし、ある日「yuki」という少女のアカウントに出会ってから、日常が狂い始める。
yukiの投稿する死に顔は、あまりにも完璧だった。
演技とは思えない脱力感、死の静寂、そして圧倒的な美しさ。
彼女のフォロワー数は桁違いで、私の投稿は「模倣」「偽物」と嘲笑されるようになる。
激しい嫉妬と憧れに憑りつかれた私は、画像を拡大し、彼女の瞳に映り込んだ風景から撮影場所を特定する。
それは、祖母の家の近くにある山奥の廃屋だった。
「本物」の撮影現場を見てみたい。
あわよくば、その化けの皮を剥いでやりたい。
歪んだ執着を胸に、私は酷暑の中、その廃屋へと足を踏み入れた。
カビ臭い日本家屋の奥、西日の差す和室で、yukiは写真のままの姿で横たわっていた。
美しい。
やはり彼女は別格だ。
そう感動して近づいた私は、すぐに異変に気づく。
鼻をつく甘ったるい腐敗臭。
半開きの口に出入りするハエ。
土気色に変色した皮膚。
彼女は演技をしているのではない。
加工でもない。 本当に、死んでいたのだ。
そして床には、彼女が「死体」になってからの変化を克明に記録した写真が散らばっていた。
三脚もない、自撮りでもない。
では、誰がこれを撮ったのか?
戦慄する私の背後で、開いていたはずの障子がゆっくりと閉まる。
閉じ込められた密室。
暗闇の中で響く、何者かの荒い息遣い。
「次は、君がいい」 完璧な死に顔を求める何者かのレンズが、今、生きた私に向けられた。