あらすじ
世界では今、「羊」が足りない。
不眠に苦しむ人間が増え続ける一方で、眠りへ導くための資源――「羊」は慢性的に不足していた。
夢は基盤インフラとして管理され、需給は監視され、配給は制御される。
「羊飼い」が配給を司り、「牧羊犬」は《LAMB素子》を集め、観測装置CORGIによって試験管上で確定した羊――《DRE-A(ドリー)》が出力される。
その全ては、眠りし人が見る夢によって世界を維持するための、冷たい運用だった。
眠れない青年は“適性”を見出され、牧羊犬として働く。
見てはならないものを見ず、ただ音を頼りに《LAMB素子》を拾い、運ぶ。
だがある日、観測装置で臨界事故が起きる。
夢は恐怖へ反転し、未確定の羊が溢れ、眠りは救いではなく災厄として拡散していく。
世界が不可逆に沈む中で、青年の口だけが覚えていた言葉がある。
「おはよう、世界。」
ログと独白で綴られる、インフラSF×神話論×不眠の掌編。