あらすじ
東京の地下に広がる階層型迷宮。
この世界では、探索者の価値は「実力」ではなく「数字」で決まる。
配信の同時接続数、投げ銭、視聴者の熱狂──
それらが市民権ランクを左右し、住む場所も、受けられる医療も、人として扱われるかどうかすら決定する。
不遇職【記録官】の烏丸灰都は、そんな社会の最底辺《G-7》に属していた。
彼の仕事は戦うことではない。
勇者や英雄の戦いを記録し、配信するだけの“脇役”。
明日死んでも、誰にも気づかれない存在だった。
ある日、新宿迷宮三層で、所属していた勇者パーティーは壊滅する。
仲間に囮として切り捨てられ、死を待つだけの状況で、
烏丸は“禁止スキル”に触れてしまう。
【事象再演】──
過去に記録した英雄の戦いを、自らの肉体で再現する能力。
ただしその代償は、英雄が死の間際に味わった激痛を、そのまま引き受けること。
血を吐き、骨を砕きながら放った一太刀は、怪物を討ち果たし、
同時に世界を熱狂させた。
「今の……撮れてた?」
その一言から、配信の数字は跳ね上がり、
烏丸の市民権ランクは“人間扱いされる側”へと書き換えられていく。
これは、承認が魔力となり、人権になる世界で、
一人の記録官が“見られる側”になる物語。
英雄譚ではない。
生き残るための、命がけの配信記録だ。