あらすじ
横浜・三ツ境。SEの川口航平は、些細な出来事を境に、日常の下に口を開けた「ダンジョン」に迷い込む。
帰ってきたはずの実家。寝たはずの夜。なのに目が開き、天井は暗く、窓の外だけが薄く明るい。隣で母が寝ているはずなのに、気配が遠い。
頭の中に、文が落ちてくる。——「実行してください」。
命令は、アーチ、跳躍、倒立、そして“漫才のツッコミ”。評価は「可/不可」。可なら拍手、不可なら無音。次の瞬間、左足が一段、また一段と重くなる。失敗は即、身体に刻まれる。
水は三口だけ。インターバルは六十秒。反復は儀式になり、時間感覚が壊れていく。拍手は気持ち悪いのに、いつしか航平は「可」を待ち始める。
これは無料の地獄だ。断れない。支払うのは、時間と身体。
終わらない夜の中で、航平は“自分の意思”を取り戻せるのか。