あらすじ
霊能力者・間宮響子のもとに、一人の青年・勇人が相談に訪れる。彼は、亡くなった父親が現れる奇妙な悪夢に長く悩まされていた。夢の中では、消灯したはずの家の廊下が扉の磨りガラス越しに淡く光り、扉を開けるとそこは真っ暗な虚無が広がっている。さらに枕元には突然死した父が立ち、「おい、俺は死んだのか?」と現実味のある声で問いかけてくるのだった。
やがて夢は変質し、夜中に廊下へ出ると、暗闇の中に父親が立っている光景が繰り返されるようになる。日を追うごとに父親との距離は確実に縮まり、悪夢は現実を侵食し始めていた。響子はそれが父の霊ではなく、死者の姿を借りて人の夢と現実の境界を渡ってくる“何か”であると見抜く。
今夜が限界だと判断した響子は、勇人に「扉を開けない」「呼びかけに答えない」と警告し、自らも家に留まり夜を迎える。しかし廊下に現れた“父”と視線を交わしてしまった瞬間、響子は取り返しのつかない過ちを犯す。
勇人の悪夢は止まり、日常は取り戻されたかに見えた。だがその代償として、同じ現象が間宮響子自身のもとに忍び寄る。消したはずの廊下の灯り、磨りガラス越しの気配、そして枕元に立つ存在の問いかけ――。
「俺は、死んだのか?」
物語は、恐怖が終わらず“引き継がれていく”ことを示唆しながら、廊下がなおも縮まり続けている余韻を残して幕を閉じる。