あらすじ
「世界が君を忘れても、俺だけは、その痛みを記憶している」
ここは東京都渋谷区に存在する叡祥高等学校の片隅にある「第二図書室」。
そこは、情報過多の現代で、あまりにも多くのものを「覚えすぎてしまう」少年・灰原綴(はいばら つづる)と、彼を唯一『獣』と呼ばなかった先輩・千歳朔(ちとせ さく)の静かな聖域だった。
一度目にした光景を、音を、感情を、決して忘れることができない『超記憶症候群(ハイパーサイメシア)』を持つ綴。
彼は、その能力のせいで過去に傷つき、感情を殺して生きる道を選んだ。
そんな二人の放課後の日課は、図書室の返却本に挟まれた、誰にも届かないSOSを回収すること。
「100周年記念の美談」
「謝罪という名の強制的な和解」
「SNSで称賛される善意の押し売り」……。
学校が作り出す眩しい光の裏側で、押し潰され、消されそうになっている誰かの悲鳴を、綴のアーカイブ……記憶だけは逃さない。
「千歳先輩、見つけました。この叫びの主を」 「……よくやった、灰原。あとは俺の仕事だ」
これは、忘却できない呪いを抱えた少年と、彼を救いたいと願う先輩が、静かな図書室で紡ぐ、最も切実で優しい抗議の記録―――。