あらすじ
戦争から帰還した青年は、命より大切だったものを失っていた。
右腕を失い、かつて村一番の腕前と謳われたピアノも、もう弾けない。
学生時代を過ごした屋敷に戻った彼は、
自らを「終われなかった存在」「価値のない厄介者」だと責めながら、
何もかもを拒み、ただ日々をやり過ごしている。
そんな彼の前に現れたのは、
かつて近所に住んでいた無愛想な少女。
今はこの屋敷で働くメイド、橘鈴子だった。
口数は少なく、愛想もない。
だが彼女は、彼の部屋を掃除し、ピアノを磨き、
そして何より、彼の絶望から離れようとしない。
生きる意味を見失った青年と、
答えを持たないまま隣に立ち続けるメイド。
失われたものは戻らない。
それでも、人は生きていていいのか。