あらすじ
本来なら世界を救うはずの高等錬金術を、彼女はただ酔うために浪費した。
身に覚えのない罪で断罪され、家も婚約者も失った元伯爵令嬢エレノア。
彼女に残されたのは、前世から受け継いだバーテンダーの知識と、異常なまでの酒への執着だけだった。
修道院行きを拒否して夜の街へと消えた彼女は、路地裏の廃屋を極上の隠れ家バーへと変える。
熟成に十年かかるワインを一瞬で完成させ、疲労を消し去る魔法のカクテルを振る舞う日々。
そんな彼女の店に、二人の男が迷い込んでくる。
一人は国の影の支配者と恐れられる氷の宰相。
もう一人は、かつて彼女を捨て、今さら後悔にやつれ果てた元婚約者。
剣も魔法も飛び交わない。
静かなカウンター越しに繰り広げられるのは、グラス一杯で男たちのプライドをへし折り、あるいは救済する、優雅で残酷な大人の夜話。
過去を悔やみ復縁を迫る元婚約者に、エレノアが差し出した最後の一杯の味とは。