あらすじ
新年の三日間だけ、空が“透明すぎる”雪町トウメイサ。澄み切った空気は、人々が胸の奥に隠した嘘や強がりを凍らせ、白い結晶として空から落としてしまう。拾わなければ割れて消え、言葉は後悔の冷えとして残るため、見習い「言葉返し」のレイは結晶を拾って持ち主へ返す役目を負っていた。
元旦の朝、レイが拾った大きな嘘結晶には「だいじょうぶ」「平気」の声が閉じ込められていた。持ち主は笑顔の少女ミオ。しかし結晶は溶けず、“本当の宛先”が別にいることを示す。ミオが強がりを向けていた相手は、神殿の警備に出ている兄カイだった。
迷いながら神殿へ向かう途中、今度はレイ自身の嘘――「ひとりでいい」が結晶となって落ちる。互いの嘘を見てしまった二人は、逃げずに“返す”ことを選ぶ。カイに渡された結晶は湯気のように溶け、ミオの口から短い本音がこぼれる。
帰り道、レイは自分の結晶を胸に抱え、こたつの温度の中で気づく。透明すぎる空が落とすのは、罰ではなく「ほどけ口」なのだと。今年は、返す側で終わらせない――そう決めて、レイはまた鈴音のする方へ歩き出す。