あらすじ
大正の横浜。
春の朝、港は深い霧に包まれていた。
洋裁師見習いの朝霧すみれは、結婚写真用ドレスの最終調整のため、
山下埠頭近くの洋館を訪れる。
だが、花嫁は前夜から忽然と姿を消していた。
霧の中で白いドレスの女が海へ歩いていったという目撃談。
港湾労働者の間に広がる「港の白い女」の噂。
――怪異か、それとも事件か。
新聞記者・小田切と共に調査を進める中で、
すみれは洋裁師ならではの目で違和感に気づく。
濡れていないドレスの裾。きれいにほどかれたリボン。
導き出されるのは、
海に消えたのではなく、
死んだことにされた女の真実だった。
霧の向こうに見えるのは、怪異か、救済か。
大正横浜を舞台に描く、
幻想と理性のあいだで紡がれる怪異ミステリー。