あらすじ
異能探偵の卵が集う「乱歩探偵塾」。
嘘を見抜く「透視」、死者の視覚を読む「残像」、物質の履歴を解析する「解析」——塾生たちは皆、特別な力を持っていた。
ただ一人を除いて。
塾長が「誰よりも優秀」と称える塾生・乱歩。彼だけが、異能を持たない。特権階級の中に放り込まれた、唯一の「普通」。その孤独を、誰も理解できなかった。
夏合宿の初日。霧に閉ざされた洋館で、乱歩が密室の中で死体となって発見される。
心臓を一突き。凶器は現場に残されたペーパーナイフ。内側から閂がかけられた完全な密室。
塾長の命により、塾生たちは「公開推理会」を開く。異能で得た情報は手がかりにはなるが、証拠にはならない。推理はすべて、論理のみで組み立てなければならない。
明智の「透視」は、塾生全員に嘘がないことを示した。
金田一の「残像」は、乱歩の最期に「誰かの手」があったことを映し出した。
神津の「解析」は、乱歩自身が長時間ナイフを握っていた事実を暴いた。
御手洗の「共鳴」は、犯行時刻に二つの心拍が鳴っていたことを聴き取った。
一つは、死に向かう穏やかな鼓動。
もう一つは、恐怖で乱れた鼓動。
そして、塾長の異能「全視」が、昨夜の真実を完全に再現する。
乱歩は、自ら死のうとしていた。
誰かが、それを止めようとした。
その「善意」が——乱歩を殺した。
密室は、罪を隠すためではなく、自分自身を閉じ込めるために作られた牢獄だった。
乱歩が遺した手記には、すべてが記されていた。
なぜ彼が死を選んだのか。
なぜ「その塾生」を待っていたのか。
そして——なぜ、自分を殺させることを望んだのか。
観測されなかった星は、ようやく光を放つ。
唯一の観測者の、瞳の中で。