あらすじ
これは、大蔵家の金庫にまつわる話である。
余命わずかの父金蔵に、息子金之助は、大蔵家の家督とともに、大蔵家の累代の主が受け継いできた黒色の大金庫を譲られた。
「この金庫は大蔵家に富をもたらしてくれるのだ」と金蔵は言う。「この金庫のなかには、金が幾らでもはいっているのだ」とも。
ただし、と金蔵は警告する。
「この金庫を開けているところを、決してほかの誰かに見られてはならない。もし、主以外の誰かに見られでもしたら、大蔵家は滅んでしまうだろう」
と、今際の際の金蔵が金之助にこう告げた。
大蔵家の主だけの秘密を金之助は知ったが、父金蔵には違う事実も告げられていた。
ーーそれは、金之助が愛する佐夜子のこと。左夜子は父金蔵と関係をもっていた。
罪を犯した者。それに立ち向かった勇気ある者。それに気がつかなかった者。再び罪を犯す者。
欲望に翻弄される人間を忠実に描いた、作者、吐血ものの問題作。