あらすじ
西暦2045年。
歴史改変を監視する組織「時空収束局」に所属する監理官・シンは、
オペレーターの相棒・ヒカリと共に、過去への干渉任務を遂行していた。
観測された異変は、天正十年・安土。
本来は病死するはずの名もなき茶人が、
あり得ない密室殺人を遂げていた。
歴史に残らないはずの「音の汚染」を修正するため、
シンは単身で戦国の夜へと降り立つ。
しかし調査の最中、ヒカリの存在が歴史から削り取られ始めていることが判明する。
彼女は、数百年後に続くはずだった血脈の断絶によって、
「存在そのもの」を因果律から排除されつつあったのだ。
ヒカリを救おうとすればするほど、過去への干渉は強まり、
その結果として彼女の消滅は加速する。
そして、茶人を殺した真犯人が、
未来人でも、過去の人間でもなく、
「ヒカリが消滅したという事実そのもの」であると知ったとき、
シンは完全に閉じた絶望の円環に囚われる。
誰も悪くない。
それでも、救おうとした意志が、人を殺す。
シンが選んだのは、
ヒカリを未来へ連れ帰ることではなかった。
彼女の全記憶を過去へ投棄し、
その存在を「伝承」として歴史に定着させる――
禁忌の選択。
これは、
因果律に敗北した男が、
それでもなお“記録すること”を選んだ物語。