あらすじ
どうして自分には声がないのだろう。
どうしたら声が手に入るのだろう。
それさえあれば、こんなに苦しむこともなかった。大切な人に思いを伝えることだってできた。嫌なことを嫌だと言えた。苦しいときに苦しいと言えた。
町の人が避けることもなかった。
同年代の子たちに嫌がらせを受けることもなかった。
嫌がらせをする人間は嫌いだ。
笑って傷をつける人間も嫌いだ。
嫌な思い出ばかりの雨も嫌いだ。
体の芯から震わせるような大きな音も嫌いだ。
声を持たずに生まれてきた出来損ないな自分も、大嫌いだ。
いつからだっただろうか。
こんな自分自身のことが好きになったのは。
外に出るのが楽しみになったのは。
エルセは今日も、晴天の空を見上げる。