あらすじ
きっかけは、一本の登山動画だった。
通常ルートを外れた山道、古びた鳥居の陰に映り込んでいたのは、二年前に交通事故で亡くなったはずの恋人、浅見悠真あさみ ゆうまの姿だった。 「幽霊ではないか」と騒がれる中、瀬戸陽葵せと ひまりだけは確信する。あれは間違いなく彼だと。
居ても立ってもいられず、陽葵は東北の霊山へと足を運ぶ。 導かれるようにたどり着いた鳥居の先で、彼女を待っていたのは――永遠に夜が明けない「潮鳴村なりしおむら」だった。
篝火が揺れる静寂の村。 そこは、死者への未練を断ち切れない者たちが迷い込む、現世と幽世の狭間。 咲き乱れる彼岸花は血飛沫のように弾け、呪いを撒き散らす異形の怪物「ヒトガタ」となって陽葵に襲いかかる。
手首に浮かび上がる呪いの痣。魂を蝕む穢れ。 絶望する陽葵を救ったのは、沢に佇む謎の少女、美翅みはねと、母から受け継いだ「蛍石の簪かんざし」だった。
「この先には、元凶となる鬼がいる」
少女の警告にも関わらず、陽葵は歩みを止めない。 この道の先に、悠真がいると信じて。
愛する人にもう一度会いたい。 その純粋な願いが、彼女を恐ろしい真実と、悲哀に満ちた決断へと導いていく。
※この物語の前日譚がありますが、気が向いたら投稿するかもしれません。