あらすじ
武田照之は、人間ではない。
病気もせず、怪我をしてもすぐ治り、人には想像もつかない、長い時を生きる。
しかし、そんな強靭な生命力を持つにも関わらず、照之の同胞は失われ、長く孤独に生きてきた。
しかし、そんな彼は今、義理の弟である翔を育てている。
両親を亡くし、身勝手な者たちのために心に傷を負った翔を気遣い、十年近くに渡って愛情を注ぎ続けてきたのだ。
しかし、年を取らず、容貌も変わらない照之にとって、長くひとところに止まることは自らの秘密が周囲に知れる危険を伴う行為でもあった。
高校三年生になっても、未だ心の傷が癒えない翔を心配しつつも、照之は近いうち、再び身を隠す必要性を感じていたのである。
そんな照之を、ある日不思議な男が訪う。
櫻井と名乗るその男は、照之の素性を知っているような口振りで話し、照之の日常に暗い影を落とした。
照之は翔と、自らの静かな日常を守るため、過酷な現実に身を投じてゆく。そしてその先には照之自身も予想しない、重い決断が待っていた。