あらすじ
異常は、必ずしも危険とは限らない。
多くの場合、それはただそこにあるだけだ。
僕は博士として、そうしたものを日々観察し、記録している。
理解しようとはしないし、無理に意味を与えることもしない。
ただ、そこにあったという事実だけを書き残す。
今日も、特に何も起きなかった。
それが本当に「何も起きていない」のかは、記録とは別の問題だ。
この物語は、僕が続けている観測日誌である。
穏やかな日常の記録であり、
同時に、あまり公開されることのない研究の断片でもある。
異常は静かだ。
派手に暴れたり、こちらに答えを求めたりはしない。
だから僕も、感情を持ったまま、淡々と書き続けている。
読まれても、読まれなくても構わない。
観測されたという事実だけが残れば、それでいい。
――これは、解決しないまま続いていく、僕の記録である。