あらすじ
天体観測を趣味とする御岳奈緒は、
ある夏の深夜、防災行政無線から流れる“本来は正午に鳴るはずの音楽”を耳にする。
違和感を覚え外に出た彼女の前には、
虚ろな表情のまま、無言で同じ方向へ歩き続ける人々の群れが広がっていた。
話しかけても反応はなく、
その異様な行進の裏では、人の形を部分的に保った“異形”が街を徘徊している。
奈緒は好奇心と恐怖の間で葛藤しながら、
襲われないために人々の群れに紛れ込み、その行き先を追う。
たどり着いたのは、山中の神社。
集められた人々、跋扈する異形、空を染めるマゼンタ色の光。
逃げ場を失った奈緒は、
“振り向いてはいけないもの”を見てしまう。
翌夜、再び防災行政無線が鳴る。
少年の目に映ったのは、
虚ろな表情で歩く人々の中に混じる、
人ではなくなったはずの存在だった。
これは、
誰にも説明されないまま日常が侵食されていく、
静かで残酷な現代怪談。