あらすじ
雪国の宿場町ユキナワ。宿「ハルミ屋」の娘コハルは、静かすぎる元旦の朝を迎えていた。台所で雑煮の出汁を温め、こたつ布団を整えた瞬間――こたつの中から、凍えた子どもが現れる。さらに、普段は気配だけのこたつ精霊コタが言葉を発した。「初夢の道が開きっぱなしだ。迷い子が落ちてきた」。
夢の門番ユメノツカサは告げる。初夢が明ける前に帰り口へ導けなければ、子は現実の縁を失い夢に留まる。コハルは“席”を作るために、湯気の立つ朝ごはんを用意する。味噌の匂い、焼き餅の音、甘酒の温度――日常の手触りが、迷い子の心と言葉を少しずつ現実へ引き戻していく。
湯気が道となり、こたつの上に夢の門が開く。コハルは「こたつの角、椀の前、みかんの籠の横」――帰る場所を言葉と温度で示し、迷い子の「おはよう」を引き出す。初夢の糸がほどけたとき、子は自分の名を取り戻し、帰るべき家へと還っていく。残るのは、湯気と匂い、そしてコハルの胸に宿った、今年の最初の温もりだった。