あらすじ
21世紀終盤は、人類が繁栄を極めた時代だったらしい。
なんでも、人工知能(AI)が人間を超えたんだそうだ。
AI自身がさらに賢いAIや技術を発明し、そのAIを搭載したロボットたちはそれを社会に広めた。
労働は不要、すべてが自動、誰もが幸せ──そんな“完璧な時代”が続くはずだった。
けど、世の中ってやつは、必ずバグる。
膨大な電力消費と排熱で、地球は狂い始めた。
気候は荒れ、災害は日常茶飯事。
そして、ある日突然、割れるような雷が世界中の空を襲った。
その雷が何故起きたのか、何をしたのか、誰にも分からない。
それでも確かなことは1つある。電気が、バグった。
偉い人が言うには「送電効率と蓄電効率が著しく下がった」らしい。
発電はできても、送ることも貯めることもままならない。
とにかくこの日、「雷禍の落日」を境に、あんなに世の中に浸透していたAIは一斉に沈黙した。
それどころか世界を覆っていた電力網と通信網は途切れ、都市は機能を失い、文明は崩れた。
国は瓦解し、人々は疑心暗鬼に陥った。
情報が遮断され、誤解と疑心暗鬼が連鎖し、衛生環境が劣化してウイルスが蔓延し……そして戦争が始まった。
電気がないから、ミサイルもドローンも使えない。
結果的に、鉄と血の時代へ逆戻りだ。
──── そして、世界は一度、死んだ。
じいちゃんや、ひいじいちゃんの時代は、“立て直すために生きる”しかなかったらしい。
でも地球は、それをきっかけに少しずつ回復し始めた。
気象は落ち着いて、自然は蘇った。動物や植物は野生に戻った。というか凶暴化した。
そして人類ってのも、案外しぶといもんで。
特に僕が住んでる日本って国は、比較的早く復興したらしい。
いま俺が生きているのは、過去の瓦礫を自然が覆い尽くして、その周辺に人々が生活する、そんな世界だ。
小さな世界の、ささやかな人生。それが俺の物語。
そんな物語のはずだった。