あらすじ
「金魚を飼《こ》うてて、どれだけ可愛がっちょっても名前だけはつけたらいけんのよ」
筆軸の先で、真っ紅な金魚が跳ねた。
美しい金魚だった。触れなば濡れん。水の滴るような絵だった。
絵があれば、絵を描くものがいる。
白い金魚のような美しい少年はみずからの血潮を筆に吸わせて、絵のなかの金魚に命を吹きこむ。
彼は金魚を描くために座敷牢で飼われている――
少年の世話係をする訳あり奉公人と命を削って金魚を描き続ける少年絵師の、昭和幻想
「そんなもん与えたら、人間様と同等や思うて死ぬる時に連れていってしまうけぇ」