あらすじ
「清々する。あとは好きにしろ」――それが、癌で逝った兄と交わした最期の言葉だった。 十五年前、両親を事故で亡くしてから、大学進学を諦めて私を育ててくれた兄・大樹。けれど彼は、優しさとは無縁の冷徹な人だった。 兄の死後、遺品整理のために戻った実家で見つけたのは、一冊の古い『日記』と、私の名前が書かれた『通帳』。
そこに綴られていたのは、私が知るはずもなかった「不器用すぎる愛」の記録。 「砂糖は半分、隠し味は――」 都会のワンルームで、兄の残したレシピを再現したとき、凍りついていた私の時間はゆっくりと溶け始める。