あらすじ
1985年、鈴鹿の療養病棟。入院中の「僕」の元へ、亀山高校の彼女は毎日、自宅とは逆方向の列車に乗って会いに来る。
無人になった夕暮れの外来待合室。二人は一本の瓶コーラを分け合い、ラジカセから流れるニューミュージックと彼女が歌う『赤とんぼ』の中で、限られた時間を惜しむように愛を深めていく。
しかし、彼女が二十歳で結婚を選び、二人の道は分かたれる。
数十年後、67歳になった「僕」は、ラジオから流れるあの日と同じメロディに、瓶コーラの冷たさと一九八五年の切ない熱量を思い出す。それは、失われてもなお僕を生かし続ける、一生に一度の恋の記憶だった。