あらすじ
「人を不快にさせるか、死にたい気持ちにさせるしか能が無い……ガイアク共めェッ!! 徹底的に糾弾してやるぞォッ!! そのためにも、今こそ、我々はァッ!! この腐り切った世界秩序から解き放たれし存在となるッ!! それがボクサマと、ボクサマ率いるダークネス能力者たちの集い……『能力者機構アウト・オブ・コントロール』だぁあッ!!」
それが史上最強最悪のテロリスト、"ヘブンリー・マスター・セブン"による犯行声明だった。
世界中で野放しとなっている犯罪者たちを『ガイアク』と称し、おしゃぶりを強制的にしゃぶらせ、拉致・監禁したのである。
セブンは、単なる言葉だけではなく、自らで製作したイラストや楽曲、アニメーション映像を通じ、隠蔽された数々の事件や不正、犯罪行為の事実をまとめ、SNS上などで暴露。
それらを材料に、行政や司法機関における体制、その実態がいかに腐敗しているのかを指摘し、ひいては世界統一政府である『英雄崇拝』のことを直接的に、嘲笑的に、痛烈に批判した。
回収したガイアクたちの悪事も晒し上げ、その所業をユーモラスに表現した歌詞のディスソングを作り、それを当人たちに歌って踊らせ、MV製作もして、世界中へ拡散。
セブンの管理するリビングデッドハウル収容所にて、半永久的に囚われたまま、屈辱的且つ劣悪な生活を強いられ、先のMVよろしく己の後ろめたい過去、その醜聞を自らの口で喧伝させ、生き恥を晒し続けることによって、天からの裁き──現世に堕天した救世主ヘブンリー・マスター・セブンの思し召しとした。
ガイアク回収された者の中には、医療従事者や警察関係者、Vtuberなどの人気配信者までもが含まれた……。
このセブンが出現したことにより、世界は混沌の様相を呈することになる。
主人公のエコーは、『鋼鉄都市国家ミッドギアランド』にて、下層階級の家庭で生まれたちょっぴりだけ不遇な女の子。
両親を含めた身内は、彼女を焦燥の捌け口にすることで自尊心を保っており、エコーはいつまで経っても、彼らの束縛から逃れることができずにいた。
常に周囲からの悪意が付きまとう、そんな息苦しい幼少期において、国民的大人気アニメの"ハートマン"と、その主題歌を歌うアイドルの"ナガレボシちゃん"だけが、彼女にとって心の支えだった。
働ける歳になって自立するが、相変わらず父方の叔母さんたちからの粘着質な嫌がらせなどは絶えない。
これ以上は干渉されないようにと、いよいよ、公的機関を頼るが、血縁間の繋がりを絶つことは事実上不可能だと、現住所さえ隠すこともできないと報される。
警察に体よく『保護』され、そんな権限は無いのにも関わらず、強制的に父親へ引き渡されそうになる。
万事休すかと思われたその時、ヘブンリー・マスター・セブンが現れ、侮辱を含んだ対応をした警察官ごと、エコーを虐げてきた者たちは根こそぎ連れ去られていく。
彼女に対する仕打ちの数々も、証拠映像と共にMVを通して世界中で共有される。それにより、ついに悪意の呪縛から解放され、エコーはようやく自由になれたのだ。
頑なに正義のヒーローをこよなく愛していたはずのエコーは、自警団を自称する悪のテロリストによって救済されてしまった。
だけど、ヒーローから教えてもらった真っ直ぐな気持ちも忘れることができない……。
子供の頃から心の拠り所としていたハートマンの在り方と、実際に自分のことを助けてくれたセブンの過激な思想、いずれにも尊敬と感謝の念を抱く少女は、何を本当に正しいと信じればいいのか答えを見出せず、いつまでも葛藤し続けるのだった──。
※この物語はフィクションであり、実在する人物・団体などとは一切関係ありません。