あらすじ
海沿いにある孤立した観光地・碧流(へきる)町。この町には奇妙な伝承があった。町の境界を越えて一晩過ごすと、その日にあった「辛いこと」「悲しいこと」だけが記憶から消え、翌朝は最高の気分で目覚められるという。現代の桃源郷として人気を博すこの町に、大学を中退し、生きる意味を見失った主人公・蒼太(そうた)が逃げ込んでくる。
蒼太はそこで、不思議な雰囲気を纏った少女・六花(りっか)と出会う。町の人々が若々しく、笑顔に満ち溢れている中で、六花だけがどこか疲れ、実年齢よりも大人びた、深い悲しみの色を目に宿していた。
滞在を続けるうち、蒼太はある事実に気づく。自分が捨てたはずの「苦しい過去の記憶」を、六花が知っているのだ。 碧流町の平穏は、システムでも魔法でもなく、六花という一人の「器」が、町中の人々の「悲しみ」を毎晩すべて吸い取り、代償として一人分の時間を急速に奪われる(=老化する)ことで保たれていた人身御供のシステムだった。
「私のことは気にしないで。私は、みんなの『幸せ』のゴミ箱だから」 そう笑う六花の寿命は、あとわずかに迫っていた。 この町にとっての「楽園」を守るか、町を崩壊させてでも一人の少女を救うか。 「忘却」と「記憶」を巡り、蒼太はあまりにも残酷で、美しい選択を迫られる。