あらすじ
元救急医の神崎遼太郎は、異世界に転生して五年。 今は王都救急院で、医師として働いている。
この世界には回復魔法がある。 どんな怪我も、どんな病気も、魔力さえあれば治る。
外科手術も抗生物質も必要ない。 正直なところ、暇だった。
そんなある日、勇者パーティーの女騎士から相談を受ける。
「仲間が毎晩、悪夢を見て苦しんでいるんです。回復魔法をかけても、治らないんです」
その言葉を聞いて、遼太郎は気づいた。
——これは、身体の傷じゃない。心の傷だ。
この世界では、「心の病気」という概念がほとんどない。 回復魔法で治らないものは「弱さ」として片付けられてきた。
しかし、遼太郎は前世で何人ものPTSD患者を診てきた。 戦場で心に傷を負った人間は、決して「弱い」わけではない。
患者の元を訪ねると、そこにいたのは—— 魔王討伐の最前線で戦った英雄にして、遼太郎と同じ日本からの転生者だった。
「俺、おかしくなったのかな。弱くなったのかな」
「いいえ。あなたはおかしくない。弱くもない」
遼太郎は、前世で学んだカウンセリングの技法で、彼の心に寄り添っていく。
回復魔法では治せない傷がある。 でも、それを治す方法は、ちゃんとある。
少し笑えて、少し胸が温かくなる、異世界医療物語。