あらすじ

彼には、触れない癖があった。 エレベーターのボタン、吊り革、手渡される書類、レジで伸びてくる指先。 日常のあらゆる場面で、彼は無意識に一拍の距離を置いて生きている。 触れなければ、失うこともない。 そう身体が知っているからだ。 それでも、幼い頃に手をつないだ記憶や、名前も思い出せない誰かのぬくもりだけが、指先に残っている。 触れないことで成立する日常と、触れなかったことで確かめられない何か。 静かな一日の終わりに、彼は小さくつぶやく。

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カクヨム
カクヨム2025/12/26
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