あらすじ
田中源次郎は、二十年前にダンジョン配信者を引退した。
ダンジョン配信者になりたくて探索者資格をとったものの、二年間の活動で登録者は三人。その間にバイトとしてやっていた魔石採掘の仕事の方で正社員に誘われた田中は、安定を選んだ……といえば聞こえがいいが、ただ心が折れたのだ。
それからの二十年間。ブルーカラーもブルカラーの魔石採掘者ゆえ下に見られることもありながら、低空飛行の自分の人生に、ある種の安心感を覚えているくらいだった。
『令和エイト、新エリアを発見!』
そんなある日、令和エイトと言う今人気の若手配信者パーティが、ダンジョンで新エリアを発見したと言うニュースが日本を駆け巡った。探索自体が難しい深層ならばともかく、探索され尽くされた上層での新エリア発見というのは偉業も偉業。
世間の祝福ムードの中、田中は戸惑っていた。
「ここ、俺が二十年前配信で使っていたエリアだよな……」
そう、世間が新エリアだと騒ぎ立てる場所を、田中は二十年前に発見していたのだ。
――本来だったら、自分が先に発見したと主張してもいいところ。しかし、田中は未来ある若者の足を引っ張りたくないという思いから、そのことを墓まで持っていくことにした。
しかし、田中は忘れていた。自分の配信チャンネルを、消さずに残していたことを……。
そのチャンネルに幾つもある配信アーカイブでは、二十年前の田中が新エリアで躍動する姿がバッチリと映っていた。人気配信者ゆえにアンチも多い令和エイトの影響も相まって、その配信は二十年越しにバズりにバズったのだった。
なんやかんや田中は、二十年ぶりにダンジョン配信者に復帰する。そして、配信を通して二十年前叶えられなかった夢を現実のものにしていくのだった……。