あらすじ

路地裏にある、小さな古書店。 看板は古く、営業日も不定で、常連と呼べる客はいない。 それでも、この店にはなぜか「訳あり」の客ばかりが訪れる。 離婚を決めた帰りに本を抱えてくる人。 もう会えない相手の蔵書を処分しに来る人。 人生の整理がつかないまま、紙袋を下げて立ち尽くす人。 店主は、客の事情を深く聞かない。 慰めもしなければ、助言もしない。 ただ、本の状態を確かめ、静かに値段を告げるだけだ。 けれど、本には、前の持ち主の時間が、ほんのわずかに染みついている。 それは声になるほどはっきりせず、説明できるほどの不思議でもない。 それでも、確かに「残っている」。 本を売るという行為は、何かを終わらせることなのか。 それとも、別の形で残すことなのか。 この古書店では、人生は救われない。 大きな奇跡も起きない。 ただ、誰かが少しだけ決断をして、店を出ていくだけだ。 それでも、今日も店は開いている。 訳あり客を迎えるために。

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カクヨム
カクヨム2025/12/26
  • 現在の作品訳あり客しか来ない古書店