あらすじ
山深き村、藁屋根の下。病の床に伏せし娘おしのと、母おまさの静かなる日々。
雨夜、骨の折れた傘をさした名もなき旅人が現る。鶴のごとき所作、夜の山より澄める瞳。
白鷺の羽根を残し、風のごとく消える──。
「白鷺は、人の心のやわらかいところを見抜くという」
雪の夜、春の梅雨、旅人は音もなく訪れ、和歌を詠む。
娘の魂を、蓮の咲く極楽へと導くとき、母は何を想うか。
『白鷺と 風の音まじり 夢さそふ 空を見上げて 山霧しずむ』
『うたかたの 人の世にぞ 夢うつつ 白鷺飛んで 蓮が咲く哉』
儚き命、母の涙、風の精が紡ぐ幻想譚。
江戸の読本風に、死と再生を静かに描く一篇。
白い羽根が舞うとき、あなたの心も蓮の国へ誘われるやもしれぬ。
【全二帖・完結】