あらすじ
ホームセンターでレジに立つ宮原かすみは、
宅建資格を目指しながら、静かな日常を送っている。
毎日変わらない買い物かご。
繰り返される「いらっしゃいませ」。
けれど、ある日彼女は気づいてしまう。
――同じ客が、毎回“少しだけおかしい物”を買っていることに。
南京錠がふたつ。
宛名のない領収書。
同じ住所を示す、違う部屋番号。
それらは事件と呼ぶには小さく、
見過ごそうと思えば見過ごせる違和感だった。
しかし、その違和感の先には
「空き家のはずの部屋にいる、いないはずの誰か」がいた。
正しさを優先すれば、切り捨てられるもの。
優しさを選べば、越えてはいけない線。
不動産の男と、名もない店員の女。
二人は“境界線”の上で、
見ないふりをしないという選択をする。
これは、
日常の裏側で静かに始まり、
誰かの居場所をそっと守るための、暮らしのミステリー。