あらすじ
回復魔法を持つ少女が、戦争を終わらせた――
ただし、剣も奇跡も使わずに。
現代日本で「救えなかった命」への後悔を抱いたまま命を落とした女性は、異世界でセラとして転生する。彼女に与えられたのは、あらゆる傷と病を癒す回復魔法。そして計測用の水晶さえ砕くほど、規格外に膨大な魔力だった。
だがセラは、力を誇ることも、英雄になることも望まなかった。ただ目の前の人を癒したい――その純粋で慈悲深い想いは、やがて「聖女」として王都に迎えられるきっかけとなる。
王都で彼女を待っていたのは、回復魔法を戦争のために使うという現実だった。兵士を死なせないために癒すこと。それは戦を長引かせ、命を消費し続ける仕組みでもある。聖女として生きるか、それとも一人の人として生きるか。セラは選択を迫られる。
彼女が下した決断は、「戦うための癒し」を拒むことだった。生きるためなら癒す。だが、戦場へ戻るための回復はしない。その姿勢は混乱と反発を招くが、やがて人々は立ち止まり、考え始める――本当に剣を取る必要があるのか、と。
癒しは、世界を救わない。
けれど、世界がどう生きるかを選び直すきっかけにはなった。
これは、力を持つ者が「使わない」ことを選んだ、静かで優しい革命の物語。