あらすじ
二十年前、誰にも助けられなかった少女がいた。
教師に見放され、親に信じられず、教室という密室で孤立したまま、声を失った少女――川嶋桃乃。
二十年後。
彼女は弁護士となり、かつて自分を追い詰めた担任教師・山口由紀子に、静かに問いを突きつける。
「先生、どうして助けてくれなかったの?」
現役教師として教壇に立ち続けてきた由紀子は、
突然届いた一通の通知によって、過去と向き合うことを強いられる。
教育委員会の介入、学校中に広がる噂、
そして、同じ教師である娘から突きつけられる、逃げ場のない現実。
「正しい指導」だったはずの記憶は、
被害者の視点にさらされたとき、
ゆっくりと崩れ始める。
味方だと思っていた立場は、いつの間にか孤独へと変わり、
由紀子は初めて、
“誰にも信じてもらえない側”に立たされる。
これは、復讐の物語ではない。
正しさの名の下で、見過ごされ、黙殺されてきた問いが、
二十年の時を越えて、社会に突きつけられる物語だ。
救われなかった少女と、
救わなかった教師。
二つの人生が、法廷という場所で再び交差するとき、
「助ける」とは何だったのかが、静かに、しかし容赦なく問われる。
――沈黙は、有罪でしかない。