あらすじ
地下三百メートルに築かれた巨大地下都市〈ノア・シェルター〉。そこでは、人工の光と管理された空気のもと、人々が秩序正しく暮らしている。天井に映し出される灰色の空は地上の現実だと教えられ、外の世界は危険で人の住めない場所だと信じられていた。十五歳の少年ルイもまた、疑うことなくその世界を生きていた一人だった。
幼い頃に両親を亡くし、母の友人であるクイナに育てられた彼は、与えられた日常の中で学び、働き、未来を選択していくはずだった。しかし、クイナの娘であるミナから語られた一つの噂が、静かにルイの心を揺らし始める。――第十八層の廃棄区画で、地上の青空を見た者がいるらしい。立ち入り禁止の最下層。そこに何があるのか、なぜシェルターは偽りの姿を見せるのか。疑問は次第に確かめたいという衝動へと変わっていく。点と点が繋がり始めた時、ルイは初めて「この世界が何を隠しているのか」を考えざるを得なくなる。知ることを選ぶか、知らないまま安全に生きるか。ルイとミナは、それぞれの思いを胸に、戻れないかもしれない選択へと足を踏み出す。これは閉じられた世界で育った二人が、本物の空を見たいという一つの願いに導かれて進む、静かな脱出と始まりの物語。