あらすじ
異世界最大級の大国――アウレリオス帝国。
その第二王子レオニスが、戦乱を終わらせる切り札として禁忌の儀式「勇者召喚」を敢行した。
呼ばれたのは、勇者の称号を持つ男・新方直。
……だけではない。儀式は盛大にバグり、直の派手な母親と、弟と妹までまとめて転移。
さらにテンプレ通りに“巻き込まれ枠”として引っ張り込まれたのが――直に散々迷惑をかけられてきた、葛石一家だった。
医師の兄・葛石悠一郎。
私鉄勤務の妹・月子。
家を回す専業主夫の父・次郎。
業務用台所を設計する母・ジェイミー。
そして、溺愛ポメラニアンの愛犬・コハク。
「申し訳ない」と頭を下げたのは、帝国の大臣のひとり――宰相補佐のヴィルヘルム。
衣食住の面倒まで見てくれるというが、悠一郎は確信していた。
あの直が、何も起こさず大人しくしているはずがない。
しかも悠一郎には、異世界転移の“特典”のように新種スキルが宿っていた。
その名も――『生活設計(ライフ・アーキテクト)』。
食糧・衛生・導線・安全・物資管理。
戦う力ではない。だが、家族が生き残るために必要な“暮らしの強度”を底上げする、あまりにも異質なスキル。
両親と月子にもそれぞれスキルがある。
けれど悠一郎のだけは、明らかに方向性が違った。
――それでも彼は思う。これがあるなら、家族と、そしてコハクを守れるかもしれない、と。
まず最優先は、たった一つ。
勇者・新方直から逃げること。
勇者召喚に巻き込まれた、四人家族+愛犬の目標は「のんびり」「もふもふ」「平穏」。
……のはずだった。
だが帝国は巨大で、宮廷は甘くない。
そして勇者は、最悪に厄介だ。
葛石家の“異世界スローライフ計画”は、今日も直の一言で崩れかける――。