あらすじ
総合病院のリハビリテーション科で働く理学療法士・橘叶多。
彼は日々、患者の身体と向き合いながら、「判断」という仕事を続けている。
動かすべきか、止めるべきか。
進めるべきか、待つべきか。
数値や評価、制度や効率が先行する現場で、
その判断はしばしば説明や結果によって歪められていく。
明確な事件は起きない。
悪人も、陰謀も存在しない。
それでも、現場では静かに「選別」が始まり、
判断は誰のものなのか分からなくなっていく。
判断を引き受ける者が疲弊し、
判断しない者が安全になる構造の中で、
叶多は問い続ける。
――判断は、誰のものか。
――そして、誰がそれに寄り添うのか。
これは、医療現場を舞台に、
正しさよりも「順序」を、
結論よりも「責任の置き場」を描いた、
静かな緊張の現代ドラマである。
医療現場で起きる問題の多くは、
「誰かが間違えた」からではなく、
「判断の置き場がずれた」ことから始まります。
この物語は、
誰かを裁くためではなく、
判断に寄り添うとはどういうことかを描くために書きました。