あらすじ

この世界は、よくできている。 魔物は段階的に強くなり、冒険者は実力に応じた依頼を受け、英雄は統計上、然るべき確率で生まれる。 ――少なくとも、帳簿の上では。 フィン・アルダーは、その「計算」に含まれていない男だった。 特別な血筋も、圧倒的な才能も、世界を覆す使命もない。 あるのは、危険を避け、判断を誤らず、生き延びてきただけの経験だけ。 平凡な冒険者として、平凡に依頼を受け、 時には想定外に巻き込まれ、 それでも奇跡ではなく「選択」で生き残ってきた。 世界は彼を評価しない。 生き残った理由は「運が良かったから」。 それ以上でも、それ以下でもない。 だがその裏で、世界の均衡は静かに崩れ始めていた。 魔物の異常な強化、広がる生息域。 帳尻が合わなくなり始めた“世界の計算”。 フィンは、その原因でも解決策でもない。 少なくとも、今のところは。 彼の周囲に集まるのも、英雄ではない者たちだ。 居場所を失った獣人のヒーラー、 銃を手に混沌を肯定する貴族の娘、 すべてを少し離れた場所から眺める観測者。 彼らは世界を救おうとしない。 ただ、生きようとしているだけだ。 だが皮肉にも―― 「計算に入っていない存在」ほど、 崩れかけた世界では誤差として無視できなくなる。 これは、選ばれなかった男の物語。 混沌に抗う英雄譚ではない。 混沌の中で、間違えない選択を積み重ねる話だ。 世界が彼を数に入れなくても、 彼は今日も、明日を選ぶ。 そしていつか、 世界のほうが気づくことになる。 ――この平凡な男こそが、 最も扱いづらい「変数」だったのだと。

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カクヨム
カクヨム2025/12/24
  • 現在の作品世界の計算に入っていない俺と、混沌の厄災