あらすじ
深夜の橋で、保は歌声を聞いた。
途切れ途切れで、どこか懐かしい旋律。
街灯の届かない場所に立っていたのは、
帰る場所を持たない少年だった。
名前も、過去も、理由も語らない。
ただ、夜に溶けるようにそこにいる存在。
一度は見なかったことにしたはずなのに、
胸の奥に残った違和感が、保を引き返させる。
少年を部屋に連れ帰った夜、
保の中で、封じ込めていた過去が軋みはじめる。
かつて救えなかった少年。
触れてはいけないと知りながら、手を伸ばしてしまった記憶。
――拾ったのは、善意か。
それとも、罪の代償か。
夢と現実の境目で、
橋の上の人影は、再びこちらを振り返る。
静かで、甘くて、ひどく不穏な夜が始まる。