あらすじ
京都の公共スポーツセンターでアルバイトをしていた大学生の河野洋平は、利用者として訪れた名家のお嬢様、九条尚美と出会う。
住む世界の違う二人だったが、互いに強く惹かれ合い、立場を超えて愛し合うようになる。
しかし、尚美の実家は古くからの大地主であり、日本でも有数の資産家である父親は、二人の交際を断固として認めなかった。
家からの激しい反対を受け、行き場を失った二人はすべてを捨てて駆け落ちを強行する。
都会の喧騒から離れた場所で、二人は手を取り合い、慎ましくも幸福な共同生活を送っていた。
だが、その平穏は長くは続かなかった。
二人だけの幸福な生活も束の間、執拗な追手に踏み荒らされ、洋平は激しい暴行の末に重傷を負う。
目前で尚美を連れ去られた彼は血の海に沈んだ。
古都の屋敷へ監禁された尚美は、外界と隔離された「籠の鳥」となる。
彼女はただ一人の「女」から、家の「所有物」へと戻される苦しみに喘ぐ。
洋平の安否も分からぬまま、家系という鎖に心まで蝕まれていくが、彼女の愛の火は消えてはいなかった。
ある夜、嵐の予感が漂う静寂の中で、尚美は運命に抗う最後の一歩を踏み出す。
家人の目を盗み、迷路のような屋敷を潜り抜けて夜の闇へと駆け出した彼女。
その先に待ち受けているのは、再会か、それとも永遠の別離か。